引き算の建築
こんにちは。キュービックホーム・宇京です。
実は東京で9月まで、行きたかったけれど泣く泣く断念した展覧会がありました。
「安藤忠雄初期建築原図展 ―個の自立と対話」
言わずもがな有名な建築家、安藤忠雄氏の90年代までの初期の作品の設計図やスケッチを展示したものです。
なんとマニアックな展示会…
20年以上も設計なんて仕事に携わっていても、なかなか他人の設計図なんてお目にかかる機会もなく、ましてやそれが安藤氏の作品となるとそれはもう、居ても立っても居られないというか…しかし先立つものが…
安藤氏の初期の作品で、一躍有名にした住宅があります。
「住吉の長屋」
これまた有名ですからね、ご存じの方も多いかと思います。
大阪市住吉区の一角、狭い路地に面した三軒長屋の真ん中部分を切り取ったように建てられたそのコンクリートのお家。
広さは間口3.45m、奥行き14.25m。
そんな小さなスケールのコンクリートの箱を三等分して、真ん中に生活動線を断ち切る中庭を配置しています。
法律などの諸条件をクリアしながら通風・採光を確保し、豊かな空間をつくり上げています。
その一方で2階寝室からトイレに行くために階段を雨の日には傘をさして下りなければならないなど、無難な便利さを犠牲にし(人によっては無理!となるでしょうが)、この場所で生活を営むにあたって本当に必要なものはなんなのかを徹底的に突き詰めた結果導き出された大胆なプランとなりました。
1976年に建築されたその究極の「引き算建築」であろう小住宅は、少なくともそれまでの住宅の概念を打ち破るものであったことは否めません。
多くの問題を無視していることに驚かされます。
当時は物議をかもしたそうですが、建築学会賞も受賞しているし、専門家が見ても評価に値するものだったのでしょう。
最近は、中庭を希望されるお客様が多くなりました。
少し前までは内部空間をいかに充実させるかに苦心されていたように思いますが、少しずつ外部をいかに内部に取り込むか、室内にいながらにして屋外を感じられるか、にニーズが移りつつあるのではないかと感じています。
「住吉の長屋」は極端な例だとは思いますが、日々天気や季節の移ろいを感じられるような仕掛けも、豊かで楽しく生活を送ることができる家づくりの方法の一つだと思います。
キュービックホーム 宇京
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